------------------------------------------------------------------------  リコーダーJP メールマガジン                          103号 2016. 4. 21. ------------------------------------------------------------------------ ★ごあいさつ★  ようやく本格的な春、と思うとトタンに夏になってしまうのが近年の大阪 ですが、ここ数日は、春を毎日実感しています。  皆様いかがお過ごしでしょうか。  いつもご愛読ありがとうございます。RJPメールマガジン、第103号をお届け いたします。 RJP刊行物総合カタログ http://www.recorder.jp/rjpcatalogue.pdf ■目次■  <ごあいさつ>  1 テレマンの真相、再発見! テレマンアンサンブル演奏会 (5/13 大阪)  2 べテル室内アンサンブル演奏会 (バロックヴァイオリン) (5/28 兵庫)  3 アンサンブル・プチ・フール演奏会 (バッハ) (6/4 大阪)  4 そう楽舎 橘寺バロックコンサート ほたるの季節に (6/11 奈良)  5 2016年4月の新刊  6 編集後記 …………………………………………………………………………………………… ★1 テレマンの真相、再発見! テレマンアンサンブル演奏会 (5/13 大阪) ……………………………………………………………………………………………  「ハラッハ写本」と呼ばれる貴族の個人コレクションのなかに、たくさんの リコーダー曲が含まれていることが、比較的近年になってわかりました。その なかにはテレマンの作品もありました。    バッハばかりが崇敬を集める日本の音楽風土のなかにあって、永年にわたっ てねばり強くテレマンの作品を取り上げ続け、その魅力を伝える使徒として活 動してこられた指揮者・延原武春さんと日本テレマン協会の「マンスリーコン サート」の第470回(!)で、これらの珍しいテレマンのリコーダー作品が演奏 されます。ト短調の協奏曲(「ハラッハ協奏曲」)、ハ短調のアルトリコーダー ソナタ(「ハラッハソナタ 第1番)。他に以前から知られていた名作もいく つか演奏されます。  このコンサートでリコーダー(フルートも)を演奏される森本英希さんは、 数年前にRJPが主宰した「チェンバリストを囲む集い」にご参加くださったので お馴染みの方もいらっしゃると思いますが、音楽的にも人間的にも、たいへん すばらしい音楽家です。そして、テレマン作品の演奏にかけては、延原武春さ ん率いるテレマンアンサンブルの右に出る人たちはいないでしょう。  「阪神間のリコーダーファンは必聴」と言っていい演奏会だと思います。 http://www.recorder.jp/events/160513.htm  なお、会場になっている「大阪倶楽部」は、大阪の財界人たちから成る会員 制クラブの建物で、「大大阪」時代を彷彿とさせる豪華な内外装がすばらしい、 大阪でも屈指の贅沢な会場です。 ……………………………………………………………………………………………… ★2 べテル室内アンサンブル演奏会 (バロックヴァイオリン) (5/28 兵庫) ………………………………………………………………………………………………  「母の家べテル」というキリスト教施設で行なわれている定例演奏会の第19 回です。チェンバロ奏者・吉竹百合子さんらの出演で、バロックの弦楽室内楽作 品が演奏されます。 http://www.recorder.jp/events/160528.htm ……………………………………………………………………………………………… ★3 アンサンブル・プチ・フール演奏会 (バッハ) (6/4 大阪) ………………………………………………………………………………………………  リコーダーの財前奈緒子さん、チェンバロの山下佐智子さんらのアンサンブル 「プチ・フール」のサロンコンサートです。オール・バッハのプログラム。 http://www.recorder.jp/events/160604.htm ……………………………………………………………………………………………… ★4 そう楽舎 橘寺バロックコンサート ほたるの季節に (6/11 奈良) ………………………………………………………………………………………………  バロックオーボエ&リコーダー奏者、赤坂放笛さん主宰の「そう楽舎」の演奏 会シリーズ「古楽・風雅なあそび心」も、第130回を迎えました。今回は奈良県は 明日香村にある橘寺でのコンサートです。 http://www.recorder.jp/events/160611.htm ……………………………………………………………………………………………… ★5 2016年5月の新刊 ………………………………………………………………………………………………  5月は1タイトル(+1)がリリースになります。(+1は同一内容のA5版 製品です。) ■鈴木朝子 ワルツ(2本のアルトリコーダーとチェンバロのための) http://www.recorder.jp/piece/2/2172.htm  鈴木朝子さんは、堀切幹夫氏・黛敏郎氏などに作曲を師事され、これまでにか なり多数の作品をいろいろな機会に発表してこられていますが、出版となると、 たいへん残念ながらわずかにフルート曲「満月」「水の精」などがあっただけだ と思われます。  今回RJPからリリースとなる「ワルツ」(2本のアルトリコーダーとチェンバロ のための)はRJPの委嘱作品。とびきり楽しい出来栄えです。  チェンバロ伴奏、またアルトリコーダーの片方を省いた「マイナスワン演奏」 も収録したCDが付属していますので、すぐにこの楽しさを満喫できます。  リコーダー演奏は、RJPサポーター長谷川圭子さんに多重でお願いしました。 弊社サイトで全曲を視聴していただけます。 ……………………………………………………………………………………………… ★5 編集後記 ………………………………………………………………………………………………  前号で、通奏低音は、「チェロ ま・た・は チェンバロ」で演奏するのが(指 定に基づく)本来の形」という話を書かせていただいたところ、読者のFさんとい うかたから「面白かった」とのご感想をいただきました。そして、「ガンバを弾 く知り合いがいて 通奏低音に よく参加されるのですが、では ガンバは 一体 どういう位置で 存在していたのでしょうか?」とお尋ねでした。  私もこの方面は専門ではないので、あまり確かなことは申し上げられませんが、 ヴィオラ・ダ・ガンバはかなり貴族的な楽器で、宮廷で特に愛好されていたよう ですね。代表的な作曲家のマラン・マレもフォルクレもフランスでルイ14世に仕 えた音楽家ですものね〜  それに対してチェロなどのヴァイオリン属の楽器は、いくぶん庶民的な性格が 強かったようです。そういえば、チェロやヴァイオリンは糸巻きの部分なども渦 巻き模様ぐらいの簡素なデザインが多いですが、ヴィオラ・ダ・ガンバでは、神 像のような立派な彫刻がほどこされていたりして、贅沢なつくりが好まれていま すね。  フランスの宮廷などでは「ガンバ・コンソート」による演奏が行なわれたり、 いろいろな合奏のなかで用いられたりして、チェロよりもよほどよく用いられて いたのでしょう。しかし、ふつうの貴族や中産市民などの愛好家たちには、むし ろチェロの愛好家が多かったのではないのでしょうか。  そう推測する根拠のひとつが、例の「表紙の記載」です。イギリスで出版され た通奏低音つきソナタの表紙に書かれてある通奏低音の編成は、ほとんど「チェ ンバロまたはチェロ」です(この国にもガンバが伝えられてバロック時代にはお おいに流行ったという話もあるのですが)。ガンバを持っている人のほうが多け ればきっと出版社たちはチェロでなく「ガンバ」と印刷したのではないでしょう か。  というのも、代表的な出版業者であった Walsh などは、「最近、リコーダーよ り横吹きフルートのファンが多くなってきてるな」とみれば、リコーダー用に書 かれた曲でも副題で「横吹きフルートのための」とうたって出版したり、果ては 勝手にフルート用に移調編曲して出版したりしました。それほどに、商魂たくま しかったし、販売という目的を達するためなら、かなりダーティーな手段をも辞 さない経営ポリシーを持っていました。  ですから、「必要」ならば、通奏低音にチェロを想定して書かれた曲の表紙に チェロでなく「ガンバ」と印刷する(あるいは両方を併記する)ぐらいのことは、 一向に平気だったに違いありません。なのに、 Walshは低音の楽器としてガンバ の名を印刷する必要を認めなかったのです。  「バロック時代当時の、ガンバの位置づけ」については、私にはこの程度のこ としか申せません。どなたか、詳しい方、もしいらっしゃいましたら紙面を提供 しますので、書いてくだされば、と思います。  ところで、私が「しんしんたる興味」を抱いた疑問、すなわち、「なぜまた、 古楽界では通奏低音といえばチェンバロにヴィオラ・ダ・ガンバを組み合わせる のが普通になってしまったのだろうか? 誰がどんな根拠でこの編成を主唱し、 常識にまでさせてしまったのか?」という問いについてなのですが・・・  正直、後半の「誰が?」等々というのは全然わかりません(わかる必要もない かも知れません)が、前半の「なぜ?」というのは、少しは見えてきたような 気がしますので、それを書いてみます。  思うに、ひとつには、「滅んでしまっていた楽器なので、復元製作されたガン バが、スター扱いされ、古楽の現場でもてはやされた」ということが、あったの ではないかと思われます。  ご承知のように、ガンバはリコーダーやチェンバロとともに19世紀のあいだ に滅んでしまっていました。それを古楽復興運度のなかで、「昔はこんな楽器が あったんだぞ!」というわけで、復元製作するようになったわけですから、これ らは「古楽に特有の存在」として目立つことになります。そして、ガンバが、そ の貴族趣味の優雅な姿ともあいまって、チェンバロと並ぶ「スター」・・・とい う言い方が俗にすぎるなら、まぁ「象徴的存在」・・・となったのでしょう。  さてそこで、古楽復興運動の演奏家(まぁ若き日のブリュッヘンやレオンハル トなど)になったつもりで考えてみましょう。  モダン楽器によるモダンなスタイルのバロック演奏しか知らない世の中に対し て、敢然、「古楽」の演奏をアピールしたいのです。  そういうときに、(楽譜には「チェロまたはチェンバロ」と指定のある)通奏 低音を、どういう編成で演奏するか?  チェロ(低音弦楽器)だけ、というのは、もちろん時には良いけれど、せっか く楽譜に「数字記号」が書いてあるのに、やっぱり、ちょっと我慢した編成とい う感じは否めません。せっかく和音の記号が書いてあるんだから、和音が弾ける 楽器(つまり鍵盤楽器)は外せないところでしょう。  しかし、そうかといって、「チェンバロだけで伴奏」という形も、なんとなく 19世紀以後に全盛になった「ピアノで伴奏」という編成に似ていて、ちょっと 古楽らしい雰囲気が足りない。すなわち、興行的(営業的)に、パンチが利かな い。  そんな感じがしたのではないでしょうか。  そこで、チェンバロ「ま・た・は 」チェロ、という指定には目をつぶって、 チェンバロ「お・よ・び 」チェロ(低音弦楽器)という編成に行き当たります。  以下、仮想の対話。 ■「いっそのこと、チェンバロとチェロと、両方使ったらどうかな? 当時だっ  て、そんな編成でやることも、ときにはあっただろうしさ」 ◎「ていうか、通奏低音の扱いは、かなり自由だったみたいだね。チェンバロに  何か重ねるのもまぁあったろうし、オルガンでもリュートでも良かったりとか、  ファゴットやバスリコーダーでやったりとか」 ■「なら、全然いいじゃん、チェンバロとチェロと、両方ってことで」 ◎「でもさー、チェロって今でも普通にあって誰でも知ってる楽器だろ。せっ  かくなら、チェロじゃなくて、ガンバ使ったら、お客さんが珍しがるんじゃ  ないの」 ■「そうか、ガンバか! いかにも古楽らしい感じがして、いいかもな」 ◎「だろ。それで行こうや!」 ・・・とまぁ、そんな具合だったのではないでしょうか。  つまり、ここには、2段階で、現代の古楽復興運動の「都合」というか、そう 言うのが意地悪すぎるなら、まぁ「事情」がはたらいていたのでしょう。 (1)「チェロまたはチェンバロ」と指定されているが、「チェロだけ」(これ  は標準的な編成とするには物足りない)も、「チェンバロだけ」(これは古楽  らしさをアピールする点で物足りない)も、選びたくなかった。 (2)そこで「両方」を使うことにしたが、さらに、チェロではなくヴィオラ・  ダ・ガンバという「ヨリ古楽らしい楽器」を使いたかった。 というわけですね。  古楽復興運動だって、やはり、「純粋に、音楽的な動機」(というのも変な言 いかたですが・・・)だけによって進むわけには行かなかった。商業的採算性、 聴き手にどう訴えるかという「売り方」の戦略・・・等々の要素は、どうしても 絡んでこざるを得なかったのでしょう。  それは、担い手がプロの演奏家たちだったのですから、ある程度はやむを得な いことです。咎めたり非難したりするほどのことでもないでしょう。しかし、 「チェンバロ+ガンバ」が通奏低音の標準的編成であるかのように考える、「古 楽復興運動の呪縛」からは、いいかげんで解き放たれてよい頃だと思います。  そして、私としては、皆さんに「チェンバロだけ」の伴奏を提供してきた自分 たちのスタンスについて、あらためて自信を持てました。  初めてチェンバロの伴奏でアルトリコーダーを演奏してみたとき、「これで良 いじゃないか。ガンバを加えるのが普通のようだが、チェンバロだけで伴奏する のが、なぜいけないんだ?」と私は思いました。  それで、この仕事を始めるとき、「チェンバロの伴奏を提供するので十分だ」 と判断したのです。その判断が「やはり間違っていなかった」と確認できたのを、 嬉しく思っている次第です。 (RJPディレクター 石田誠司) ------------------------------------------------------------------------  リコーダーJP メールマガジン                              103号 2016. 4. 21. ------------------------------------------------------------------------ 編集・発行 リコーダーJP http://www.recorder.jp info@recorder.jp ※このメールマガジンは、お申し込みにより配信しています。もしも間 違いやいたずらの登録により配信がなされている場合や、購読を停止 される場合は、リコーダーJPダイレクトの皆様ならば、お手数ですが、  上記 info@recorder.jp まで「メールマガジン不要」などの題でメー  ルでお知らせください。「まぐまぐ」からお申し込みいただいた皆様  は、  http://www.recorder.jp/magazine_mag2.htm  から配信停止のお手続きをお願いいたします。 ※リコーダーJPからの配信は「B.C.C.配信」です。