リコーダーJP J.S.バッハ作品


ソナタ ト長調 BWV1019



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★解題★

 この曲のオリジナルはヴァイオリンとオブリガートチェンバロのためのソナタです。バッハのヴァイオリンソナタというと無伴奏のシリーズが有名ですが、ほかにオブリガートチェンバロの曲が6曲、そして何曲かの通奏低音つきのソナタもあります。ことにオブリガートチェンバロのためのソナタはフルートのためのシリーズとならぶ名曲ぞろいで、録音も数多く行なわれています。

 これらのソナタは1725年ごろにライプチヒで書かれたものだろうと言われ、カフェでおこなわれていた小さな演奏会でバッハ自身も出演して初演されたものだそうです。作品としての特徴は、何と言ってもバッハ独自の「チェンバロ右手も独奏楽器や低音と対等」という書法にあります。ときにはヴァイオリンが2声以上を奏でる上にチェンバロ右手も複数声部を弾き、5声・6声の音楽になる場面もあるという大変なものです。もっとも、この書き方は、演奏効果というか音響的な観点から言えば少し無理がある(観念的にすぎる)場面もありますが、しかしそういう問題を越えて、音楽の中身のすばらしさが嫌でも胸に迫ってくるがのが、バッハの偉大なところでしょう。


★解説★

 5つの楽章から成っています。各楽章に割り振った調性の構成がこの時代のソナタとしてはやや特異であるのと、第3楽章で独奏楽器が休み、チェンバロ独奏になるのが大きな特徴です。

 第1楽章はアレグロ(快活に)、4分の4拍子。対位法的にがっちりと組み立てられ、堂々として大規模な建築性の高い曲です。明るく力強いテーマを扱いますが、同時に何ともいえない気品があるのがバッハならではの特徴でしょう。

 第2楽章はラルゴ(広びろと)、4分の3拍子で、主調からみると平行短調(ホ短調)の楽章です。転調を交えつつ表現的な主題を何度も呼び交わしながら音楽が進みます。

 第3楽章は再びアレグロ、4分の4拍子で、長調に戻ります。BWV1018のソナタでは旋律楽器のほうがすっかり伴奏に回ってしまう楽章がありましたが、ここではさらに一歩を進めて完全に休ませてしまいました。おおむね3声ないし4声で淡々と語ります。

 第4楽章はアダージョ(ゆっくりと)、4分の4拍子で、主調からみると属調の平行短調(ロ短調)で始まり、属調(ニ長調)で終わります。シンコペーションを含むリズミックな主題をフーガふうに扱っていきますが、途中から導入されるシンコペーションのゼクエンツは、バッハのフーガによくみられるような、一種の「浮世離れした感じ」を持っています。

 第5楽章はアレグロ、8分の6拍子ですが、ジークふうの曲とは違って、実にどっしりとした力強さがあります。いかにもバッハらしい堂々たる終曲です。中間部にあたるところではエピソードふうの新しい主題を扱ってたくみに気分を変えています。


※演奏例がお聴きいただけます

■リコーダーによる演奏(変ロ長調)
第1楽章(C−2)
第2楽章(B−3)
第3楽章
第4楽章(B−3)
第5楽章(C−1)
※カッコ内の表記は指回り難度です
※リコーダー演奏: 石田誠司  チェンバロ(電子楽器)演奏: 石田誠司


■ヴァイオリンによる演奏
第1楽章
第2楽章

第4楽章
第5楽章
※ヴァイオリン演奏: 棚田めぐみ  チェンバロ(電子楽器)演奏: 石田誠司


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