★ フーガの技法は、
J. S. バッハ晩年の傑作・・・という以上に、彼の最後の未完の大作です。ひとつの基本主題をもとに、いろいろな技法を駆使した多数のフーガを作って曲集にしました。
★ 「フーガの技法」には、楽器の指定がありません。弦楽四重奏で演奏したり弦楽合奏で演奏したり、またオルガンやチェンバロで弾いたり、いろんな演奏が行われている中、リコーダー重奏による演奏もよく行われます。
★ 「フーガの技法」の初版譜では、第14番目の曲として Contrapunctus a 3,
第15番目に Contrapunctus inversus a 3 という、1対の作品が置かれています。Contrapunctus
Inversus とは「転回対立」ぐらいの意味になりますが、その真意は、「転回対位法」によって、楽譜全体(スコア)を鏡に映したように上下反転させても演奏できるように作られた1対のフーガであるという点にあります。
★ ただ、奇妙なことに、初版では先に置かれた14番目の曲こそが Inversus(転回形) であり、15番目に置かれて inversus
と付記された曲のほうが Rectus(原形) であるとみられています。弊社版では「やっぱり原形を先にするのが順序では?」という考えかたから、第14番目の本作を「フーガの技法 第15番」とし、第15番目の曲を「第14番」といたします。(ややこしい話ですみません)
★ せっかくのバッハの苦心の成果を理解するためには、バッハ全集版のようにこの2曲(原形、転回形)のスコアを上下に並べて印刷してある楽譜を見ると、たしかにまるで間に鏡を置いて映したかのように音符が上下逆になっている様子が一目でわかります。
※ 演奏例がお聴きいただけます
■リコーダー三重奏(SAB)による演奏(多重) ※リコーダー演奏: 武藤哲也(Papalin)