ソナタ ニ長調 作品1-13
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★解題★
ヘンデルのヴァイオリンソナタは、いわゆる「作品1」にぞくする、作品1−3、1−10、1−12、1−13、1−14、1−15を合わせた6曲とされてきたのですが、他にも自筆譜がみつかったりした曲がいくつかありますので、最近の演奏家がヘンデルのヴァイオリンソナタをまとめて取り上げるときには、それらの曲も演奏されるのが普通です。逆に、作品1−10、1−12、1−14、1−15については、自筆譜がみつかっていないうえ、当時の人の手で楽譜に「ヘンデル氏の作ではない」とメモ書きされているのがみつかったりしたため、真筆でない疑いも持たれており、除外して扱われることが多くなりました。
そもそもヘンデルの「12のソロ 作品1」は1730年ごろアムステルダムのRodger版として出たのが最初ですが、これはロンドンのWalshがヘンデルにもRodgerにも無断で出した、一種の海賊版だったとのことです。次いで数年のちに、そのうち2曲のヴァイオリンソナタを別の2曲のヴァイオリンソナタに差し替えてWalsh版が出版されました。さらに旧ヘンデル全集(クリサンダー版)では、両版をあわせた計14曲に、新たに1曲のヴァイオリンソナタ(ニ長調・作品1-13)を加え、15曲から成る「作品1」を構成したのです。
ずいぶんややこしい成立経緯ですが、これは元はと言えばWalshが「合計12曲」という体裁にこだわったために無理して曲をかき集めたのが原因だとされています。
★解説★
作品1−13はヘンデルの自筆譜がみつかっているという点で貴重な作品です。
第1楽章はアフェトゥオーゾ、4分の4拍子です。主和音の分散和音で始まる気品あるテーマで始まり、細かな付点のリズムもとりいれて軽やかな動きもみせます。
第2楽章はアレグロ、4分の4拍子で、フーガふうに書かれています。ヘンデルのフーガは(バッハとは対照的に)快速で快活なものに傑作が多いようで、この楽章もみごとなできばえです。また、16分音符のアルベルティ・バス音型がさかんに低音に現れるのは、ヘンデルのリコーダーソナタの場合と同じく、このソナタが「独奏楽器とチェンバロ」のための(つまり低音弦楽器の参加をあまり想定しない)ソナタであることをよく示していると思います。
第3楽章はラルゲット、4分の3拍子です。ロ短調で、悲しみを帯びたしらべが心に沁みます。
第4楽章はアレグロ、4分の3拍子です。付点のリズムによる力強いテーマで始まり、かろやかな経過句、速い音階を中心とする句などを素材としていきいきとした展開をみせる引き締まった名曲です。ただ、自筆と比べると、クリサンダー版などには合計18小節のカットがあり、この形での演奏もおこなわれてきました。
※演奏例がお聴きいただけます
■ヴァイオリンによる演奏
第1楽章
第2楽章
第3楽章
第4楽章
※ヴァイオリン演奏: 串田えがく チェンバロ(電子楽器)演奏: 石田誠司
■リコーダーによる演奏(ヘ長調)
第1楽章 (B−3)
第2楽章 (C−2)
第3楽章 (B−2)
第4楽章 (C−2)
※カッコ内は指回り難度です。
※リコーダー演奏: 石田誠司 チェンバロ(電子楽器)演奏: 石田誠司
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