■解題(ペジブルのデュオソナタ)■
17世紀末から18世紀初めにかけて、イギリスでは紳士たちの間でアルトリコーダーが大流行しました。ジャック・ペジブル(ジェームズ・ペジブル)は、その立役者だったと目される人物で、写本で残っている独奏ソナタは、はなやかな技巧を盛り込み複雑な転調を駆使する曲が目立ちます。
対して、1702年にWalshが出版した「作品1」の二重奏ソナタ集は、アマチュア愛好家が楽しめるように比較的易しく書かれた曲が多くなっています。
■解説(ヘ長調・作品1-2)■
5つの楽章から成り、うち速い楽章が二つです。
第1楽章はラルゴ(広々と)、4分の4拍子の、やや渋い味わいですが、美しい曲です。この楽章に限らず、原典の楽譜は臨時記号の解釈にちょっと悩ましい箇所がありますが、弊社版では「原典(を当時のルールで読み取った)通り」としています。
第2楽章はアダージョ(ゆっくりと)、4分の3拍子です。ニ短調で、有名な「クリーガーのメヌエット」と同じモチーフで始まり、途中はヘ長調に明るみますが、最後はイ短調に飛び込んでそのまま終わります。(こういう調性の運びがペジブルにはときどきみられます。)
第3楽章はプレスト(速く)、4分の4拍子です。かろやかに始まって、美しいかけあいのゼクエンツやちょっと不思議な転調など、ペジブルらしい魅力のある楽章で、かなり速く演奏しても面白そうですが、そのかわり、演奏はたいへん難しくなるでしょう。ヘ長調で始まり、最後はハ長調で終わっています。(ヘ長調の属和音で終わっていると聴くこともできるかも知れませんが。)
第4楽章は再びアダージョで、4分の3拍子。同度カノンふうのかけあいで始まる、どこか牧歌的な感じの音楽です。
第5楽章は再びプレストで、8分の9拍子(付点四分音符を1拍とする3拍子)です。2部から成り、前半・後半とも繰り返しますが、前半は八分音符までの速さが中心だったのに、後半は十六分音符の連続が中心となりますので、最初が易しいからといってあまり速いテンポで始めると、ひどい目にあいます。
※ 演奏例がお聴きいただけます
■リコーダーによる演奏
第1楽章 B2
第2楽章 B1
第3楽章 C1
第4楽章 B2
第5楽章 C1
※カッコ内の表記は指回り難度です
※リコーダー演奏: 武藤哲也