作曲家紹介コーナー 新井雅之さん
〜天性の勢いと小気味よい運動性〜
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●プロフィール●
東京都在住。東京芸術大学作曲科卒。作曲を野田暉行氏に師事。ピアノ曲やフルート独奏曲、吹奏楽曲など多方面の作品がある。現在、東邦音楽大学講師。
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○○新井雅之先生 直撃いんたびゅー○○
●石田誠司さんに引きずり込まれ、音楽の道に
RJP:新井先生のご出身はどちらですか?
新井:えー、奈良県ですね。実家はそちらにありますが、もう東京に出てきてからのほうが長くなってしまいました。
RJP:といいますと、いつまで奈良にいらっしゃったのですか?
新井:音大に入学するまでです。僕は、小学校の高学年から、中学時代まで石田君と学校が一緒だったのです。高校は、それぞれ別になってしまったのですが・・・
RJP:そうでしたか。
新井:石田君には、レコードをよく聴かせてもらいました。うんちくを聞かされながら、僕は音楽の世界に引きずり込まれていったわけですね。
RJP:石田さんに影響され音楽の道に進まれたわけですね。
新井:音楽会にも一緒に行きました。一番最初にお金を出して聴きに行ったのが、ビバルディの「四季」でしたね。有名な演奏家が田舎に来るっていうんで聴きに行ったわけです。
RJP:他にはどんなものを?
新井:モーツァルトの「フィガロの結婚」ですね。日本語版でしたけど。僕たちは二人で音楽を聴き出した頃から、モーツァルトが好きでした。
●作曲家をめざして上京
RJP:先生が、作曲をされるようになったのは、いつ頃でしょうか。
新井:中学1年の終わり頃から中学2年にかけてですね。音楽を演奏することよりも、曲を作ることに興味がわきまして。それで楽譜に書いて石田君に見せたところ、彼にけちょんけちょんに言われたんですよ。
RJP:まあ、ひどい。
新井:僕は金輪際、彼の曲をけなしたことがなかったのですがね。
RJP:でも、音楽雑記帳2の「音楽と調性」の中で「ウンコみたいな」と、書いてありますけど・・・
新井:本人は忘れております。(笑)
RJP:それ以来、ずっと作曲を続けられたのですね。
新井:もっと突っ込んで作曲の勉強がしたくなったので、音大受験のために東京へ出てきました。それ以来ずっと東京ですね。
●小さい頃好きな楽器はリコーダーだった
RJP:お好きな楽器は何ですか?
新井:小学生の頃、リコーダーはよく吹いていました。吹けるようになると嬉しくて、大人に向かって「こんなに吹けるんだぞー」って感じで。
RJP:中学に入られてからは?
新井:フルートが欲しかったですね。でも、ピアノを一生懸命やらなければならなかったですから、フルートを吹いてられなかったのですね。まあ、お金もなかったんですけど。
RJP:フルートは体験せずじまいですか?
新井:フルートは結局買えませんでしたけども、尺八は家にあったので、吹いたことがあります。リードがふるえて音を出す楽器よりも、息が直接消費される楽器が好きなのです。たとえば、ビールびんに息を吹き付けると「ぼーっ」と鳴りますよね。そういう音が好きだったのです。
RJP:私も息が直接伝わるという点で、リコーダーが好きですね。
●嗜好の広がり
新井:フルート、ソプラノリコーダーなど、子供の時は高い音が好きだったのです。最近は低い音の楽器も好きです。
RJP:年齢と共に低い音の楽器を好むようになるのでしょうか?
新井:というよりか、嗜好の範囲が広がっていくのでしょう。食べ物でも、大人になるといろいろ複雑な味がわかるようになりますね。
RJP:たとえば、「ほろ苦いものが食べられるようになる」と、いったことでしょうか。
新井:そうですね。リコーダーの曲にしても、いろいろな味わいのものが、あっていいのではないかと思います。僕の作った曲に関しては、バロックのスタイルをそのまま借りてきまして、踊りの曲で書いたのですが、それはたくさんある可能性のうちの一つにしかすぎないわけですよね。皆さんそれぞれにイメージがあって、表題で具現されていますので、演奏する方にとっても選り取り見取りなわけです。
RJP:作品には、作曲家の個性がいやでも出てきますから・・・。
●段階による制約
新井:バラエティに富んでいますが、ただ単に曲を並べたというのではなく、段階によって音に制約がかけられていますから、教則本としての意味も貫かれています。
RJP:その点は、「上手くできているな」という感じがしますね。
新井:制約に従って書くというのは、どんな場合にも必ず付き物なのです。自由に曲を書く場合にも、まあもちろん制約は付いてきます。これが、音楽を作る側にとっても練習ですね。
RJP:そうですね、限られた音しか使えない訳ですから、その中でどれだけの物が出来るかということになるわけですね。
新井:その点から行きますと、私の書いた範囲は、選べる音がたくさんありますから、私のような能力の無い者でも書けます。石田君のは、音にものすごい制約がありますから、作る方にとっても大変なわけです。
RJP:はあ。(何と答えてよいものやら・・・)
●モーツァルトの曲
新井:音楽を歌うという作曲家では、モーツァルトがすごいですね。無駄な音が無い、それから足りない音も無い。これは理想的な形ですね。モーツァルトは、子供の頃から死ぬまで、音が多すぎもしないし少なすぎもしない。これは驚異ですね、奇跡です。専門に作曲をしている者でもそんな風になりたいと思っています。
私の先生に、言われたのですね。「若い時ほど音がたくさんある、年を取ってくると音が少ない」とね。
RJP:必要な音を必要な箇所に置くことが大事なんですね。
新井:凡人が曲を作る時には、練習して切磋琢磨して何曲も何曲も作るわけですよね。そういう意味でもリコーダーの曲を作るということが、自分にとっても勉強になりました。
RJP:新井先生の曲を吹かせて頂いて楽しんでいます。
新井:そう言って頂くと、作った甲斐があります。そうそう、今度石田君を交えて鍵盤でも前に置いて、酒でも飲みながら対談したいものだと伝えて下さい。
RJP:はい、わかりました。貴重なお話をありがとうございました。
(2002.04.02)
〜新井雅之さんについて〜
インタビューでバレてしまったように、私とは小学・中学の同級だった人だが、良くも悪くもアマチュアリズムと縁が切れない私とちがって、彼は今や大学に教職も持つ立派な実力を持つプロ作曲家である。ついでに言うと、音楽に引きずり込まれたのは私の方ではなかったかと思うのだが(笑)
※ インタビューにある、「ビバルディーの四季」を演奏しに奈良県文化会館に来たのは、ジャン・フランソワ・パイヤールと彼の管弦楽団。「フィガロの結婚」は、やはり奈良県文化会館での二期会の公演で、亡き立川澄人さんがタイトルロールを歌い、大橋国一さんが伯爵、伊藤京子さんがスザンナだったと記憶する。今思えばものすごいモノが奈良県くんだりまで来たものだ。
ともあれこの人の作品の持つ生き生きとした運動性、小気味よい切れ味、そして親しみやすい歌謡性は、すばらしく魅力的だ。これは中学生のころから際立っていた特長で、彼の天性の才能だろう。
現在登録されている作品は、すべて「バロックふう」をある程度狙って書いていただいたものなので、当然のようにまさにバロック風の気品をたたえているが、しかし、同時に、バロック作品にはなかなか見出せないような力強いダイナミックさや、軽妙なユーモア、あるいは流れるような歌謡性など、曲ごとに多様な魅力が盛り込まれていて、その存在価値は光り輝いている。(別に中学生のときにけなした埋め合わせをしているわけではない。本当にそう思いますよ、新井先生。)
リコーダーJP ディレクター 石田誠司
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