■全身で歌う根っからの音楽人 〜〜赤坂放笛さんについて〜〜■
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■赤坂さんとの出会い
関西では数少ないプロのバロックオーボエ奏者である赤坂放笛さんの存在は、2000年に山陰で行われた小さな音楽祭で知った。それはバッハイヤーを記念してのバロック音楽を中心とする音楽祭であったが、それに関西から出かけて出演しておられた赤坂さんは、アマチュア奏者たちといっしょに楽しそうに演奏していた。
とくに私の印象に残っているのは、ホールのロビーを利用した気軽なミニコンサートで、ヨハン・クリスティアン・バッハの室内楽曲(フラウト・トラヴェルソとバロックオーボエ、バロックチェロ、ヴァイオリン、ピアノフォルテのための五重奏曲)を演奏されている姿である。
このときの赤坂さんは、休符を数えているときなど楽器を手にニコニコしておられて、屈託のない幸福感にみちたロンドンのバッハの音楽が、極東の島国に住む赤坂さんのために書かれてあったのかという気がしてくるほどだった。
それを見て自分まで心から楽しい気持ちになった私は、「ああ、本当にこの人は音楽が好きで、音楽を演奏していると幸せに感じる音楽家なのだなぁ」としみじみと思ったものだ。
■あふれんばかりの歌心
赤坂さんについて抱いたこの第一印象は間違っていなかったと今でも思う。中学生・高校生に音楽を教えたり、小学生にリコーダーの導入指導をする仕事などもしていらっしゃるが、「僕は教えるのは苦手。教えられるような人間じゃないんです。はやく教える仕事をやめたい」と赤坂さんは語る。
じっさい、話し上手という人ではないし、また、器用に嘘をついて要領よく世渡りするなどもできそうにない、純朴な青年である。それに、どう見ても理論派ではない。間違っても頭で考えて音楽を組みたてるタイプの音楽家ではないのだ。「教える」のが苦手であっても不思議はないと思う。
しかしそのかわり、赤坂さんには、しっかりした技術に支えられたうっとりするほど美しい音色とともに、輝くようにつややかな音楽性が、あふれんばかりに備わっている。ひとたび楽器を手にした赤坂さんは、音符たちを音にしてこの世に送り出してやるとき、心の赴くままに吹いてやるだけで、音符たちを最高度に美しい装いで送り出してやることができるのだろう。頭のてっぺんからつま先まですべて天性の音楽性で満たされたような奏者なのである。天才肌の人だと思う。
■楽しみな演奏家
そして赤坂さんは、バロック管楽器奏者の常として、もちろんリコーダーの演奏もされる。早川さんとのジョイントコンサートなどでは、リコーダーを持って舞台に立たれることもある。だが、「僕はリコーダーは下手です。Kさん(アマチュア奏者)のほうがずっと上手です」などとおっしゃる。
むろんKさんのリコーダーはすばらしい。だが、こういう言葉は、それだけ赤坂放笛という音楽家がオーボエという楽器を心から愛し、また自信も持っていることの裏返しでもあるだろう。同時に、音楽家として自分に厳しい姿勢の表れでもある。早川さんとのデュエットCDの試験ミキシングをお聞きになったときのメールにも、私などにはとても楽しい演奏なのに、「自分の演奏のまずさに落ち込んでいる」という意味が書かれていた。
このように赤阪さんは、本当に音楽が好きで演奏する幸福を隠さない人でありながら、自分の演奏に対して冷静で厳しい目を向け続けている。こういう人が大成しないはずはなかろう。今後のいっそうの活躍が楽しみである。
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リコーダーJP ディレクター MIDIチェンバリスト 石田誠司 |
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