リコーダーJP シェドヴィル(ヴィヴァルディー)作品
ソナタ「忠実な羊飼い」2番 ハ長調
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★解題★
イタリアの人気作曲家・アントニオ・ヴィヴァルディーの名声は、ルイ15世治下のパリにまで轟いていました。しかし、ヴィヴァルディーの出版作品は1729年の「作品12」の協奏曲集を最後にとだえたままでした。これは印刷して出版するより署名入り自筆を売るほうが収入が多かったからではないかとみられています。
ところが1737年になって、「ヴィヴァルディーの作品13」と銘打った作品がパリで出版されました。しかしそれは協奏曲集ではなく、ミュゼットなどの独奏楽器と通奏低音のための6曲から成るソナタ集でした。これがすなわち「忠実な羊飼い」とよばれる曲集で、実はこれは、パリ・オペラ座のミュゼット(一種のバグパイプ)奏者にしてミュゼット教師としてもパリの貴婦人たちに大人気だった、ニコラ・シェドヴィルという人が、ヴィヴァルディーの名をかたって出版したものだったのです。むろん高名なヴィヴァルディーの作品であると偽ることによって、よく売れるようにと願ってのことだったのでしょう。シェドヴィルの手口は周到にして巧妙で、真作らしく見せるために、ヴィヴァルディーの協奏曲を改作した楽章を混ぜたりしてありました。
こうして世に出た「忠実な羊飼い」は、以来、怪しまれながらもいちおうヴィヴァルディーの作品として伝えられてきました。とくに2番・ハ長調や6番・ト短調はよく親しまれており、多くの演奏家が演奏会でも録音でも取り上げてきました。近年の研究で、ようやくここでご紹介したような事情が明らかになり、「忠実な羊飼い」はシェドヴィルの作品とみられるようになったのです。
むろん、シェドヴィルがこの作品を世に出すときにやったことは感心しませんが、曲のほうはさわやかな田園情緒をたたえた佳品がそろっています。リコーダー用の曲だとは言われていませんが、作曲者の指定は「ミュゼット、ヴィエール※、フルート、オーボエ、またはヴァイオリンと通奏低音」で、これだけたくさんの個性の異なる管楽器・弦楽器の名を並べているのですから、要するに独奏楽器であれば何で演奏したっていいということです。その上、音域的には「4番・イ長調」に「低いミ」が出てくるのだけが例外で、ほかはすべてアルトリコーダーの音域にジャストフィット。これをリコーダーで楽しまない手はありません。
※ 「シェドヴィーユ」でなく「シェドヴィル」と表記するのが正しいことがわかりましたので、従来の表記を改めました。
★解説★
2番・ハ長調のソナタはむかしFM番組の主題曲に使われたことでよく知られるようになり、人気のある作品です。明るくのびやかな旋律、素朴な牧歌性と都会的な洗練との独特な混交の魅力はここでも健在です。
ただ、第2楽章について、比較的古いいろいろな録音では、ファクシミリ譜で見る当時の印刷譜(「パリ版」)から大きな削除が行なわれていました。ベーレンライター社の楽譜がほぼその形を示しています。これについては私に調べ得た限りでは典拠がわからなかったのですが、こちらで聴き慣れ(吹き慣れ)ている人も多いことを考慮して、製品にはこの形による伴奏と演奏例も収録することにしました。
曲は4楽章から成っています。
第1楽章はアダージョ(ゆっくりと)と指定されたプレリュード(前奏曲)で、なつかしさをたたえた美しいメロディーで愛されています。
第2楽章はアレグロ・アッサイ(おおいに活気をもって)、8分の3拍子。かなり速いテンポを求める活発な曲です。笛と通奏低音のユニゾン(同じ音を弾く)が効果的に使われています。原典はかなり長大なものですが、削除した版には舞曲ふうの小ぢんまりした味があります。
第3楽章はサラバンドで、アダージョと指定されています。おだやかに歌います。
第4楽章はアレグロ・4分の2拍子。軽快に調子よく進む音楽で、最初に出てくる部分を、間にべつの部分を挟みながら何度もくりかえす「ロンド形式」で書かれています。
※演奏例がお聴きいただけます
■リコーダーによる演奏
第1楽章(B−2)
第2楽章(C−1)
第3楽章(B−1)
第4楽章(C−1)
※カッコ内は指回り難度です。
※リコーダー演奏:石田誠司 チェンバロ(スピネット)演奏: 高橋たかね
■フルートによる演奏
第1楽章
第2楽章
第3楽章
第4楽章
※フルート演奏:大塚由貴 チェンバロ(電子楽器)演奏: 石田誠司