初級者のための、楽しくためになるコラム
VIVA! リコーダー その8

指かけ





■着脱式指かけ

 「アウロス」ブランドのプラスチックリコーダーには、着脱式の「指かけ」が付属しています。この指かけを、好みに応じて右手親指の位置にとりつけ、楽器を支えるのに役立てることができるわけです。とくに「左手だけの音」、つまりはミ、ファ、ソなどの音がめまぐるしく交代するようなところ(さらには、これらの音と、右手も使う音とが入り混じって速い動きになるところは、もっとかも知れません)では、指かけがあると楽器が安定していてとても演奏しやすいのです。

 この「着脱式指かけ」が最初からついているのはアウロスだけのようです。まさかあの指かけを手に入れるだけのためにアウロスのリコーダーを買う必要はないでしょうが・・・。あの指かけだけを売ってくれたりもするのかも知れませんね。(後記:着脱式の「指かけ」=サムレストは、別売されている一般的な商品で、上等のものは木製のものまであるそうです。)



■木製リコーダーの場合

 指かけは、うまく使うと非常に快適に楽器が保持できますから、これに慣れると、木製のリコーダーでも指かけが欲しくなります。とは言え、自分で取り付けるのはいくら何でも乱暴ですから、楽器職人さんに依頼して、指かけになる木片を取り付けてもらうことになります。プロの先生でも、指かけをつけていらっしゃるかたはたくさんいるところをみると、別に「初級者がつけるもの」というわけでもないようです。だとすれば別に恥ずかしがることもないでしょう。

 ですが、指かけの位置というのは、実に微妙なもので、個人個人、具合のいい位置はごくわずかずつ違っていますし、同じ人でも、練習を進めるうちに、右手親指の位置を変えたくなることはめずらしくありません。そのため、いくら慎重に「ここでいい」という場所を探して、そこに取り付けてもらったはずでも、後になって「やっぱりなんかおかしい」ということになりがちです。

 そうなると、仕方なく、また外してもらって、取り付け直しを依頼するはめになります。そんなことを何度かやると、楽器の裏側は、木片を取り付けるために打ったネジの穴だらけ。費用の無駄もさることながら、大切な愛用楽器を穴だらけにしてしまうなんて、残念なことですよね。

 ですから、木製楽器に指かけをつけてもらうなら、仮の指かけをつけておき、かなり長い期間、本当にその位置でいいかどうかを検証するなど、とにかく、慎重の上にも慎重に最適の位置を決め、取り付けを一度だけですませるしかないでしょうが・・・。それでも私たちのような「発展途上リコーダー奏者」の場合は、将来、また何か自分の演奏技術を進歩させる上で、親指の位置を変更しなければならないことがないとも限りません。困ったものですね。その意味でも、最初にのべた「着脱式」は便利かも知れません。



■指かけを使わない場合

 ところで、もちろん指かけを使わない奏者もいます。この場合、とくに大きな問題になるのは、右手を使わない音域(ドレミファソのあたりですね)で、めまぐるしく音が動くようなときです。左手だけで楽器も保持しながら、めまぐるしく指使いを変えるのは、非常にやり辛いことなのです。たとえば、「ファとファ#」のトリルは「01」と「0」との交代で演奏しますが、これを指かけなしでやると、何しろ左手の親指と右手の親指の上に楽器が乗っかっているだけ、という瞬間が出現しますから、ひどいときには、楽器がすべり落ちそうになったり、バランスを崩して楽器をとり落としそうになることすらあります。

 ではどうするかというと、演奏に参加していない右手を、楽器の保持に役立てるしかありません。親指と、せめてもう一本の別の指とで楽器をはさみ、楽器をくわえている唇とを合わせて、少なくとも「3点」で支えなければ、軽いリコーダーといえども、しっかり保持できるとは言えないのです。(付記・同時に大切なのは、楽器を高めに上げておくこと、先っぽが下がりすぎないように持つことです。楽器が下がると保持のためによぶんな力が必要になるからです。)

 そこで、著名なリコーダー奏者・山岡重治さんが、ご著書『やさしいリコーダーの吹き方』で推奨されているのは、次のような方法です。すなわち、右手がまったく指穴を押さえないときは、右手の小指を、楽器のジョイント部(つなぎ目・・・つまり6の指穴と7の指穴の中間)に添えておこう、というものです。これは、当サイトのはじめてのかたのアルトリコーダー講座でもご紹介しています。

 他の場所でなく「ジョイント部」に小指を置くのには、理由があります。小指は本来は7の穴を押さえるために使うわけですから、いい加減に小指を置くと、7の指穴や、場合によっては6の指穴に接触する可能性があります。もしこれらの指穴を小指が一部でもふさいでしまうと、音程や音色に悪い影響が出ますから、それを避けなければならないのです。(後記・むかしは6の指穴を押さえておくものであったのだそうです。)

 そこで、ジョイント部の凹凸の感触を頼りに、小指を置く位置を決めようということです。また、ジョイント部の凹凸が、小指で楽器を支えるための「手がかり」になりやすい(つるりとした平面的な表面に小指を置くよりも、小さな力で楽器を保持できる)ということもあるのだろうと思います。

 ちなみに私は、「指かけっていいなー」と思うくせに、実際の演奏では指かけを使いません。その最大の理由が、「まだどこに親指を置いていいかはっきりとわからない」という情けない理由だというのは内緒です。とほほ。

※千葉県にお住まいのIさんからのご教示を元に、加筆修正を行いました。Iさんどうもありがとうございました!(2002.6.25)

リコーダーJPディレクター 石田誠司  

  

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