■リコーダーとピッチ
ふつうのリコーダーは「現代ピッチ」といって、ラの音を440〜442Hzぐらいに合わせて作ってある・・・ことになっています。ですが、これがけっこう、いろいろ難しい問題をはらんでいます。
リコーダーJPの現代ピッチ伴奏CDは、440Hzで作ってあるのですが、たぶん、プラスチックリコーダーですと、少し伴奏のピッチが低く感じられるはずです。というのは、プラスチックリコーダーの場合、ピッチが少し高めに作られているのがふうつうで、ものによっては444Hzぐらいに合わせてあることもあるからです。
こういう場合、だいたい1ミリから2ミリぐらい頭部管を抜いてやると、伴奏CDのピッチに合うようになるはずです。ただし、楽器が温まっているか冷えているかによってもピッチは変わってきますので、注意が必要です。楽器が冷えているとピッチは低くなり、あたたまってくると高くなってきます。
■ピアノと合わせる場合
いまリコーダーJPの伴奏はラが440Hzだといいましたが、ピアノの場合は、442Hzぐらいに合わせてあることが多いのです。現代のオーケストラなども、だいたい442Hzで合わせることが多いようです。
これは何故なのかよくわかりませんが、おそらく全体に張りのある強い音を得たいために、高めにチューニングしたがる傾向があり、それがだんだん広まってきたのでしょう。ウィーンフィルハーモニーなども昔からずいぶん高くチューニングしていることがあって、リヒァルト・シュトラウスという作曲家は、自作の演奏を聴いたとき、後で指揮者に「なぜ半音高く演奏したのだ」とたずねたことがあるそうです。
こういう高いピッチに合わせてある楽器と合奏する場合は、プラスチックリコーダーでもそれほど楽器を抜く必要がなくなってきます。
■楽器を暖める
さて、木製楽器の場合、逆に、吹き始めはたいていピッチがとても低くなっています。楽器によっては、かなり楽器が温まっているはずなのに、なかなかラの音が440Hzまで上がってくれないこともあります。楽器の湿りぐあいなど、いろいろなことが関係しているのかも知れません。木の楽器は生き物なので、状態によってほんとうにいろいろなことが起こります。
とにかく楽器が冷え切っていては、木製楽器のピッチはものすごく低くなりますし、また、楽器が冷えている状態で演奏すると、内部に水滴がつきやすく、すぐに音がつまってきます。音のつまりはプラスチックリコーダーに比べれば木製楽器は起こりにくいのですが、それでも、冬にいきなり冷たい楽器を吹き始めたりすると、やはりかなり早くにつまってしまいます。
ピッチのためにも、また内部に水滴がつきにくくするためにも、あらかじめ楽器を暖めておくことが大切なのです。ベテランの奏者は、よく演奏前に懐に頭部管を入れて暖めていらっしゃいます。コタツの中に放り込んでおく、という奏者のかたのお話を聞いたこともありますが・・・私は個人的には何だか怖いので、やったことがありません。自然に人間の肌で暖めてやるほうが無難なような気がしますね。
|