W.A.モーツァルト
ソナタ ト長調 KV373a(379)
★この曲を収録したCDつき楽譜★
SV011 ヴァイオリン用 2800円+税
SV025 ヴァイオリン用 3800円+税
SF017 フルート用 2800円+税
SF032 フルート用 3800円+税
★解題★
原曲はヴァイオリンソナタですが、フルートへの編曲譜がいくつもの出版社から出版されており、フルートでもたいへん美しく演奏できます。
モーツァルトのヴァイオリンソナタは、この不世出の天才が、その輝かしい才能を最も存分に発揮したジャンルのひとつであり、この点でオペラやピアノコンチェルトと肩を並べると言っても過言ではありません。モーツァルトはウィーンきってのピアニストとして活躍しましたが、彼のひらく演奏会はピアノソロだけで構成されていたのではなく、むしろコンチェルトや歌を含むアンサンブル曲がたくさんプログラムに載っていました。幼少のころから家族(ヴァイオリニストであった父、ピアノが上手だった姉)や(父の)友人たちとアンサンブルを楽しみながら成長したモーツァルトは、「ピアノと他の楽器のアンサンブル」の曲を書くのがいちばん楽しかったのかも知れません。
そう言うと「でもヴァイオリンソナタではモーツァルトが弾くピアノは伴奏なのでは?」とお感じのかたもいらっしゃるかも知れませんが、実はモーツァルトの「ヴァイオリンソナタ」は、「ヴァイオリンの伴奏をもつクラヴィーアソナタ」と題されていたぐらいで、ピアノはけっして単なる伴奏ではなく、ヴァイオリンと協力して音楽をつくる二人の主役のうちの1人でした。そして、ピアノとヴァイオリンのためのソナタというジャンルにおいて、これらのモーツァルトのソナタこそがその理想の姿を示していると考えられています。
KV379のソナタは、1781年にウィーンで出版された6曲セットのうちの1曲です。序奏ふうの第1楽章、アレグロのト短調で激しい表現をふくむ第2楽章、美しい変奏曲の第3楽章から成る名作です。
★解説★
3つの部分(楽章)から成っています。(ここで言う第1楽章と第2楽章をまとめて第1楽章とする見方もあるようですが、RJP版ではわかりやすく3楽章構成として扱っています。)
第1楽章はアダージョ、4分の2拍子。ピアノの示すテーマにフルートが応えて始まります。ひろびろとした感じの印象的な副主題をまじえ、幻想的・即興的な気分で音楽が進み、第2楽章にそのままつながるように半終止します。
第2楽章はアレグロ、4分の3拍子。激しい表現をふくむト短調の第1テーマとピアノのトレモロに乗って示される経過句ふうの第2テーマを持つ小規模なソナタ形式とみて良いのでしょう。とすれば「展開部」は後半の冒頭でフルートにあらわれる新しいモチーフを中心とするたった12小節ほどのエピソードふうの部分ということになります。速い曲ですが、何度もフェルマータでミエを切りながら進む音楽は、やはり第1楽章と同様な幻想曲ふうの印象を残します。
第3楽章はアンダンティーノ・カンタービレの変奏曲です。なつかしい風情をもつ美しいテーマは、後半の初めにフォルテとピアノの対比する部分を持っています。以下、16分音符を中心としてピアノだけで奏される第1変奏、16分の三連符を基調とする第2変奏、32分音符の動きが中心になる第3変奏と、しだいに音符が細かくなっていきます。しかし第4変奏はがらりと気分を変えた短調の音楽になり、第5変奏はアダージョでうっとりと幸福感に浸ります。そしてテーマが回帰し、短いコーダがあって曲が結ばれます。これだけで10分を超える大曲ですが、長ったらしさを全く感じさせない引き締まり充実した楽章です。
※ 演奏例がお聴きいただけます
■ヴァイオリンによる演奏
第1楽章
第2楽章
第3楽章
※ヴァイオリン演奏: 棚田めぐみ ピアノ(電子楽器)演奏: 石田誠司
■フルートによる演奏
第1楽章
第2楽章
第3楽章
※フルート演奏: 大塚由貴 ピアノ(電子楽器)演奏: 石田誠司