W. A. モーツァルト
ソナタ 変ホ長調 KV293b(302)
★この曲を収録したCDつき楽譜★
SV022 ヴァイオリン用 2800円+税
SF031 フルート用 2800円+税
★解題★
原曲はヴァイオリンソナタですが、フルートへの編曲譜がいくつもの出版社から出版されており、フルートでもたいへん美しく演奏できます。
モーツァルトのヴァイオリンソナタは、この不世出の天才が、その輝かしい才能を最も存分に発揮したジャンルのひとつであり、この点でオペラやピアノコンチェルトと肩を並べると言っても過言ではありません。モーツァルトはウィーンきってのピアニストとして活躍しましたが、彼のひらく演奏会はピアノソロだけで構成されていたのではなく、むしろコンチェルトや歌を含むアンサンブル曲がたくさんプログラムに載っていました。幼少のころから家族(ヴァイオリニストであった父、ピアノが上手だった姉)や(父の)友人たちとアンサンブルを楽しみながら成長したモーツァルトは、「ピアノと他の楽器のアンサンブル」の曲を書くのがいちばん楽しかったのかも知れません。
そう言うと「でもヴァイオリンソナタではモーツァルトが弾くピアノは伴奏なのでは?」とお感じのかたもいらっしゃるかも知れませんが、実はモーツァルトの「ヴァイオリンソナタ」は、「ヴァイオリンの伴奏をもつクラヴィーアソナタ」と題されていたぐらいで、ピアノはけっして単なる伴奏ではなく、ヴァイオリンと協力して音楽をつくる二人の主役のうちの1人でした。そして、ピアノとヴァイオリンのためのソナタというジャンルにおいて、これらのモーツァルトのソナタこそがその理想の姿を示していると考えられています。
KV302のソナタは、1778年にパリで出版された「マンハイム・ソナタ」のうちの1曲です。力強い開始から魅力あふれる展開をみせる第1楽章、ここちよく歌い流れるロンドの第2楽章から成っています。
★解説★
第1楽章はアレグロ、4分の3拍子です。分散和音による決然としたモチーフとそれに続く優しく歌うモチーフから成るテーマはモーツァルトが少年時代から晩年に至るまで愛好した型です。オペラの序曲のようにわくわくするクレッシェンド、短調のエピソード、力強く伸びやかな副主題など多彩な音楽がくりひろげられます。展開部は全体に短調に傾いて悲劇的な情緒を強調しています。
第2楽章はアンダンテ・グラツィオーゾ、4分の2拍子のロンドです。最初ピアノで提示されるロンド主題は同音連打で始まるあたたかな旋律。第一副主題は強弱の対照を効果的に用いたエピソードふうのものです。一瞬ロンド主題が回帰したあと始まる第二副主題の部分は、軽い16分音符の導入句のあと、ロンド主題と関係の深い短調の主題を歌います。
この後、ロンド主題・第一副主題・ロンド主題・第二副主題の順にあらわれ、最後にロンド主題を扱って曲がしめくくられますが、各主題は登場のたびに装いをこらしていて、ゆたかな内容を持つ音楽になっています。
※ 演奏例がお聴きいただけます
■ヴァイオリンによる演奏
第1楽章
第2楽章
※ヴァイオリン演奏: 棚田めぐみ ピアノ(電子楽器)演奏: 石田誠司
■フルートによる演奏
第1楽章
第2楽章
※フルート演奏: 大塚由貴 ピアノ(電子楽器)演奏: 石田誠司