初級者のための、楽しくためになるコラム
VIVA! リコーダー その6

音程の微調整





■リコーダーの「欠点」?

 リコーダーは「ブロック」という仕組みを通じて発音する関係で、息の強さによって音程が変わります。強い息を入れると音が上ずり、逆に息が弱すぎると、意図したよりも低い音になってしまうのです。

 このことは、よく「リコーダーの欠点」だと言われますが、ちょっと待ってください。どの楽器にも個性があり、特有の音色があり、発音機構や音の制御の仕組みからくる「違い」はありますが、それを一概に「欠点」だと言ってしまうのは、いかがなものでしょうか。


■音程に気をつけるのは当然

 もちろん、音楽において音程の正確さは大切な要素ですから、リコーダー奏者が音程に気をつけるのは当然です。ことにアンサンブルのときには、これが大切です。リコーダーという楽器の特性をよく理解して、音程が悪い演奏になりすぎないように注意することはいつも必要ですね。

 息が弱過ぎるのは駄目、強過ぎるのも駄目ですが、そのどちらでもない範囲で、強弱の表現は、リコーダーなりの幅で可能です。リコーダーは、その「幅」が比較的小さい方だとは言えますが、それはリコーダーの個性であり、そういう強弱幅で表現していくのがリコーダー音楽の個性なのです。


■音程微調整の高級テクニック

 それでも、ときには、奏者は「普通よりうんと弱い音」や「うんと強い音」が欲しくなることもあります。そういう特別な場合に、音程微調整のためによく用いられる高級テクニックとして、「弱音のときは正規の指使いよりも指穴をあける」「強音のときには正規の指使いよりもよぶんに指穴を押さえる」というのがあります。

 たとえば、「01」と押さえる「ミ」の音で、ごくかすかな弱い音が欲しいときは、ごく弱い息を入れるかわりに、1の指(左手人差し指)の指穴に、少しだけすき間をあけるわけです。完全に押さえずに、空気がもれるようにするのです。こうすると、ふつうに息を入れてやると音程が上ずる(少し高い目の音が鳴る)ので、息が非常に弱いと、ちょうどバランスして、「弱いミの音」が得られるのです。

 逆に、「非常に強いミの音」が鳴らしたければ、ミの音の「01」に加えて、たとえば3(左手薬指)とか4(右手人差し指)とか、普通はこの音では押さえない指穴を余分に押さえてやって、非常に強い息を入れるのです。押さえかげんを半分だけにしたり、ほんの少しだけ押さえたり、指を浮かせ気味に押さえたりと、押さえ方にも無限の可能性があります。これと息の強さのかねあいで、欲しい音が得られるようにかげんするわけですね。

 曲の終わり、すーっと消え入るように終わらせたいときなどは、息を弱めていくのにつれて、指穴を、指をころがすようにして開けていく・・・。テレビのリコーダー番組などでも紹介されていたそうですね。とても難しくてよく失敗するのですけれど、私もやってみることがあります。


■しかし・・・

 そういうわけで、リコーダーにもいろんなテクニックがあって、普通に思われているほど「音の強弱が出しにくい」「音程がいいかげんな」楽器ではありません。じょうずな奏者は、本当に正確な音程を保ちながら、十分な強弱表現を行っていらっしゃいます。

 しかし・・・実は、この点について、もう少し踏み込んだ話をしますと、「本当は、音程に少し幅があって、音程のふらつきがあるのもリコーダーの個性だ」と、多くのリコーダー奏者のかたがたは考えていると思います。そう書いたり語ったりしていらっしゃる(あるいは演奏によって主張されている)奏者のかたも少なくないのです。

 「音程が甘いのが個性」だなんて、なんだか「あばたもえくぼ」「ひいきの引き倒し」みたいにお感じになるかも知れませんが・・・。実際、そう思われるのを恐れてか、リコーダー奏者の皆さんは、思っていてもあまり声高におっしゃらない場合も多いように思います。でも、これは本当だと私は(おそらく多くのリコーダー奏者の皆さんと同様に)考えています。

 そのわけを私なりに書いてみたいと思っていますが、このお話は、少し長くなりますので、近いうちに「音楽雑記帳」のほうででも書いてみたいと思います。

(後記:書きました。こちらです。)

リコーダーJPディレクター 石田誠司  

  

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